川南の魅力

理想としていた暮らしを手に入れました

川南町の第一期研修生として福岡からやって来た保坂政孝さん(38)・美幸さん(34)夫妻。それから2年の月日が流れた2020年7月、晴れて農家としての一歩を踏み出しました。

やっぱり不安だったけど

 二人が川南に移住してきたのは2018年のこと。仕事に追われ、二人の時間がとれない毎日に嫌気がさし、「どこか違う場所でのんびりと暮らしたい」と思うようになったのがきっかけでした。
 それから2年、取材に訪れたのは定植が終わった直後で、政孝さんは「ようやくピーマン農家らしくなって、少しは落ち着きました」と日に焼けた顔をほころばせます。
 2年間、みっちり研修を受けてきたものの、就農して最初の1〜2カ月はやはり不安がつきまとったのだそうです。

 「作業自体は同じなんですけど、機械や道具を揃えたり、ハウスの準備をしたりとすべて自分たちでやらなければいけませんでしたからね。ただ、近くに部会長さんがいて毎日のように様子を見に来てくれたり、部会の方や研修仲間が手伝ってくれたり、みんなに支えられてここまでこれました」
 現在は、10月中旬から始まる初収穫を心待ちにしています。

自由を実感

 農家としてのスタートを切ったお二人が、今、一番感じているのが“自由”だといいます。
 「研修は8時〜17時までと作業時間が決められていたのですが、今は自由。何時から始めてもいいし、何時までやってもいい。本当の農家の暮らしが始まった感じです」と美幸さん。
 朝7時頃から18時位まで、昼は家に帰って長めに休憩する。しかも畑までは車で5分。福岡時代には考えられなかった、そんな理想の毎日を手に入れました。

地域みんなが仲間

 この1年で、二人にとってもう一つ大きな出来事がありました。就農に合わせて少しでもハウスに近い場所へと、引っ越しをしたのです。もともと農家さんが住んでいたというその家は、築年数は経っているものの、家主さんからの「好きなようにしていいよ」という言葉を受けて、美幸さんがDIYでリノベーションを続けています。
 「家ももちろんいいんですけど、本当にいい場所に引っ越すことができました。まわりは農家さんばかりでみんなが仲間。地域の一体感があって安心して暮らせるんです。夕方になると隣りのおじちゃんが、“あがらして”と焼酎を持ってきたり、帰ってきたら誰かが野菜を置いておいてくれたり。そんな田舎ならではのお付き合いもいいんですよ」

新しいお住まいの縁側で。目の前には家庭菜園が広がります。

我が子のようにかわいい

 「初めての年なので、収量というよりも1年間やり通すことが目標」というお二人のハウスでは、ピーマンの小さな実がなり始めています。
 「今から初収穫が楽しみで仕方ありません。研修の時とはピーマンの見え方が違うんです。我が子を見るではないですけど、かわいくて仕方が無いんですよ」と目尻を下げる政孝さん。
 川南にやって来て3年目。今やすっかり地元農家となったお二人は、心から農業ライフを楽しんでいるようです。